カイトからプロポーズらしきものを受けた翌日、メイコは久しぶりに魔導省に出向いた。元々魔道士省があった部屋はリツによって半壊させられたので、今は魔導倉庫横にある小部屋が省執務室代わりだ。
「メイコ様、やっときてくださいましたか
天妍飄眉」
臨時人事でメイコの副官になった心響がホッとした表情を浮かべる。それを見つめながら副魔道士長になったブルーノも微笑みを見せた。先日のリツとの戦いにより10人ほどの魔道士が殉死、キヨテルを含む30人程が重傷で未だ出仕がかなわない。メイコの第27代奏国筆頭魔導師就任人事もあくまでも臨時人事だ。
「お怪我のこともありましたからいつ出仕していただけるのかとヤキモキしてました。じつはいくつか取り出したい道具が魔導倉庫の中にあるんですよ」
心響の訴えに、メイコは心の底から申し訳無さそうに謝る。
「ごめんなさいね。私は大丈夫だって言ったんだけど、カイトがなかなか表に出してくれなくて」
何気なく口にした事実だが、その場に居た魔道士達は意味深な笑みを浮かべた。
「カイト中将、噂取りメイコ様にご執心なんですね」
「今回のメイコ魔道士長の出仕も業を煮やした皇帝直々のご命令だったとか
蘆薈・・・・・・よっぽどメイコ魔道士長を表に出すのが嫌なんでしょうかね」
どうやらカイトがメイコに執着しすぎて、出仕させるのを嫌がっているという噂が流れているらしい。それに気がついたメイコは慌てて否定する。
「そ、そんなことは無いと思うわよ。単にあいつは心配症なだけで・・・・・・っていうか男の子のほうが好きなんでしょ、カイトって」
だがそんなメイコの言い分を信じるものは誰一人いなかった。
「何言っているんですか、メイコ様。カイト中将、既に宗旨替えを公言してますよ」
「それとメイコ魔道士長と一緒にいる時のあのオーラの色!あんな綺麗な薔薇色のオーラを纏わせているなんて・・・ねぇ。『俺はこいつに惚れている!』って大声で叫んでいるのと同じですから」
カイトの想いを言いたい放題言う魔道士たちだったが、メイコはきょとんとしている。
「薔薇色?カイト、が?」
その一言に、魔道士達は顔を見合わせ一斉に溜息を吐いた。
「そっか・・・・・・メイコ様にはあまり繊細なものは見えないんでしたっけ」
「だからこそ魔導倉庫にも入ることができるんですものね」
「ちょっとカイト中将が気の毒に思えてきた・・・・・・:
「まぁ、今日は荷物を持ちだしたら、早々にカイト中将の屋敷に帰ってあげてください。でないと魔導省に押しかけてきてメイコ魔道士長をさらっていきそうです」
ブルーノが発したその一言はよっぽど的を射ていたのだろう。メイコ以外の魔道士達は一斉に大笑いをした。